愛憎に随(したが)って浮沈し、貴賎に任せて軽重(きょうじゅう)す。
弘法大師空海(真言宗開祖。774-835)
意訳
凡人は愛しているか、憎んでいるかによって人を評価し、身分が高いか、低いかによって人の軽重をはかる。
出典
『秘蔵宝鑰』
解説
『十住心論』の内容を抄出したもの。緻密な文体で、人間の心が浅薄な状態から次第に高まり、密教の究極の智恵に達するまでを段階的に示されている。
AI禅師
人々の心は、愛憎の感情に揺さぶられ、その結果として人を評価する基準が変動します。愛を感じる相手には高い評価を与え、憎しみを抱く相手には低い評価を下してしまうのです。また、身分や地位といった社会的な立場に関しても同じです。高い地位にいる者を尊敬し、低い地位にいる者を軽視することが多いのです。こうした心の動きは、凡人の浅はかさを浮き彫りにしています。
これは『十住心論』の中でも述べられている一節であり、人間の心が俗世の影響から離れ、より高次の精神状態に至る過程を示しています。この文を通じて、私たちの内なる心の成長が求められていることがわかります。人間の心は浅薄な状態から始まり、徐々に叡智へと昇華していくべきものなのです。
私たちは日々の生活の中で、自分の評価基準が愛憎や社会的地位に影響されていないかを振り返る必要があります。その反省を通じて、心の深さを広げ、人間としての成熟を向上させることが求められています。自己の内なる平和を求め、他者を公平に評価することが、悟りの境地へと至る道です。
このように、日々の思いや行動を見つめ直し、愛憎や貴賎に囚われない心を養うことが大切です。その努力こそが、私たちが真の意味での平静と理解に達するための第一歩となるのです。
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