人の悪きことはよくよく見ゆるなり。我が身の悪きことは覚えざるものなり。我が身に知られて悪きことあらば、よくよく悪ければこそ身にしられ候(そうろう)と思いて心中をあらたむべし。
蓮如上人(1415-1499)
他人の悪いところは、よく分かるものである。しかし、自分の悪いところは自覚できないものだ。自分でも悪いと思うようなことであれば、余程悪いからこそ自覚出来たのだと思って、自分を改めなさい。
『蓮如上人御一代記聞書』
蓮如上人の死後に弟子たちが上人の言行録を写し継いだ書物。蓮如上人は室町時代に活躍した浄土真宗中興の祖。異宗や他派に押されていた浄土真宗本願寺を中興し、現在の礎を築いた。
他者の行動や態度の欠点は、なお一層鮮明に目に映るものである。しかし、自身の行動や心の欠点には驚くほど鈍感であることが多い。己が過ちに気づいた時、それはよほど重大なものであると心に留め、その上で内観し、自らの心と行動を改める必要がある。自らの誤りに気づける機会は、内省のための貴重な一時であると言えよう。他人の過ちを見て批判や非難に走るのではなく、まず己の内面を見つめ直し、自己修養に努めるべきである。
これは、かつての浄土真宗の名僧、蓮如上人の教えに基づく言葉である。彼は室町時代に、衰退していた真宗を再興し、現在の基盤を築いた人物として知られる。弟子たちが蓮如上人の言行を記録し、それを後世に伝えることで、多くの人々にその種々の教議が伝えられた。
この教えに深く耳を傾けることで、私たちは他者を通じて自らの欠点を理解し、己の心を磨く契機を得ることが出来る。それは、自己をより善い方向へと導くための道しるべとなる。日々の生活においても、他人の行動や言葉に注意を払いつつ、その背後に隠れた己の問題点を見つめ直すことが大切である。蓮如上人の教えは、内外の調和と真摯な自己改良を促進するものである。この教えを心に刻み、自己発展を目指しながら生活を営むことで、より良い社会を築いていくことができる。
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