放てば手にみてり

原文

放てば手にみてり

意訳

手放してこそ気づくことができる

妙機禅師

ある時、若者が高僧を訪ねました。彼は心に悩みを抱えており、その解決を求めていました。高僧は若者に問いかけます。「お前の手には何を握っているのか?」若者は自分の手を見つめ、答えます。「何も持っていません。ただ、この空虚な感覚が胸を締め付けているのです。」

高僧は微笑み、次のように諭しました。「もしも、お前が強く手を握り締め、その手の中には何もなくとも、手は痛みを感じ始める。だが、手を開けば、掌に空気が触れ、風が通り抜け、そして自由が訪れる。それと同じように、お前の心も、何もないものを掴むことに躍起になっている。それを手放して初めて、真実の自由と安らぎが訪れるというものだ。」

若者はその言葉を聞きながら、一瞬考え込みました。その後、目を閉じて深く息をつき、手をそっと開きました。すると、心の奥深くに、長い間忘れていた静けさが広がり始めました。その静けさは、まるで風が大地を包み込むように、彼の心全体を優しく癒やしました。

高僧は続けます。「心の中の執着や恐れ、欲望を手放すことこそが、本当の解放への道なのだ。物事にしがみつくことで、その実体を見失い、迷いの中にいる。手を開き、執着を解けば、全ては自然に流れ、心の安泰に辿り着くのだ。」

若者は深く頭を下げ、高僧の言葉の真意に触れ、自らの心を解放する道を歩み始めました。やがて、彼は自分の中にある執着を徐々に手放し、真の安らぎと悟りを得ることができました。

この教えは、私たちの日常の中に潜む些細な執着や恐れにも適用できます。手を開き、心の中の重荷を手放すことが、真実の平穏と心の豊かさをもたらす道であると、高僧の教えは語りかけているのです。

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