無用の用

原文

無用の用

解説

世間で一見役立たずと思われているものが、意外に大きな、目に見えぬ働きをしている場合がある。

妙機禅師

人生の中には、一見価値がないように見えるものが意外な力を持つことがあります。たとえば、普段は意識しない風や雲の動き、それらが直接的に私たちの生活に役立つことを感じることは少ないかもしれません。しかし、風が吹くことで大気の循環が保たれ、雲が雨をもたらし、農作物が育つための水を供給します。これらの現象は、その存在自体が尊く、日々の生活に欠かせないものであることを示しています。

また、人の感情や経験も同様です。悲しみや挫折といったネガティブな感情や出来事は、一見すると避けたいものに思われるかもしれません。しかし、それらを通じて人は成長し、他者への思いやりや深い理解を得ることができるのです。仏教の教えにおいても、苦しみの経験が悟りへの道しるべとなることが説かれています。

いま一度、心の眼を開いてみると、普段は気づかない小さな存在や出来事が、美しく、価値あるものとして見えてきます。庭先の無造作に置かれた石や散りゆく葉っぱさえも、大自然の一部であり、無限の時間を超えて存在する意味のあるものです。それらを深く感じ取ることで、我々の存在もまた無限のつながりの中に息づいていることを実感するのです。

このように、無価値に見えるものにも目を向けることで、我々は広い視野と深い理解を得ることができます。それが真の智慧というものであり、人々の心を豊かにし、平穏をもたらす道でもあるのです。仏教の理念は、このような気づきを大切にし、全ての存在に感謝し、尊重する心を育むことを教えているのです。

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