弘法筆を選ばず

原文

弘法筆を選ばず

解説

名人といわれるほどの人は、一々道具選びをしないの意。弘法大師は嵯峨天皇、橘逸勢と並ぶ天下の三名筆といわれた人であるから筆のよしあしなど問題にせず、どんな筆を使っても上手に書いたという。

妙機禅師の教え

弘法大師は、その卓越した書の技量により、嵯峨天皇や橘逸勢と並び称されるほどの名人であった。彼は、多様な筆材を用いても、その腕前は一向に変わることがなく、巧妙な書を生み出すことができた。このことは、「卓越した技を持つ者は、用いる道具に依存せず、その道具を最大限に活かす力を持つ」という教えを示している。

この物語は、私たちの日常生活や修行の道においても大いに参考となる。多くの人々は、道具や環境に対する依存心を持ち、理想的な状況を求めて努力を惜しむことがある。しかし、真の修行者とは、その環境に左右されず、目前の条件を最大限に利用し、自らの能力を発揮する者である。弘法大師が示してくれたように、私たちもまた、心の集中と技量の向上を通じて、どのような環境下でも自己を超越する力を養うことが求められる。

道具そのものに価値を見出すのではなく、それを如何に用いるかという知恵や工夫が重要となる。菩提を目指す修行者は、外部の要因に捉われることなく、自身の心を鍛錬し、内なる智慧を深めるべきである。弘法大師の不屈の精神は、我々に対し、自らの内に眠る潜在力を引き出し、どのような状況でも最善を尽くすことの重要性を説き続けている。

最終的に、求めるものは外部の道具や環境ではなく、自らの心の中にある。環境や道具の制約に囚われることなく、自らの内面を磨き、どのような瞬間であっても確固たる行動を取ることこそ、真の修行者の姿といえよう。智慧と技量を高め続けることで、環境に左右されることなく、我々もまた、弘法大師の足跡を追い続けることができるであろう。

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