借る時の地蔵顔返す時の閻魔顔

原文

借る時の地蔵顔返す時の閻魔顔

解説

借金する時は喜んで笑顔だが、いざ返すとなると渋い顔つきになるのを地蔵と閻魔の顔に喩えたもの。恵比寿や十王にも喩える。

妙機禅師

人生の中で、人々は度々他者からの助けを求めることがあります。例えば、お金を借りる時、人はしばしば笑顔と感謝の心をもって接します。これはまるで慈悲深い地蔵菩薩のように見えます。しかし、その借金を返す時になると、状況は一転します。人々は重い負担を感じ、厳しい顔つきになります。この対照的な態度変化を、地蔵菩薩の温かい笑顔と、閻魔大王の厳しい表情として表現するのは仏教的な教えにも通じます。

このような変化は、人間の心の動揺を象徴しています。自己中心的な欲望や執着から生じる心の波が、他者との関係に影響を及ぼします。借りるときは恩恵を受け、自分だけが得をするように見えるため、喜びの感情が表に出ます。しかし返す時になると、その行為が自己の負担として感じられ、厳しい現実に直面します。

この現象を通して、仏教は私たちに執着の危険性と、自他の調和の重要性を教えます。借金や助けを求める行為そのものが問題ではありません。その行為に対する態度や心持ちが、私たちの心の平静さや他者との調和を乱す原因となります。喜んで借りる時も、苦労して返す時も、一貫した慈悲と感謝の心を持つことが、真の平和と調和をもたらします。

大切なことは、どんな状況であっても、自分の行為とその結果に対して誠実であり続けることです。笑顔で借りるだけでなく、感謝の気持ちを持って返す心を養うこと。そこにこそ、仏教の教えに基づいた真の悟りがあります。顔つきが変わることなく、常に慈しみと理解の心を持って生きることこそ、最高の姿であると言えるでしょう。

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