己こそ己の寄辺、己を措きて誰に寄辺ぞ。よく整へし己にこそ、誠に得難き寄辺をぞ獲ん

原文

己こそ己の寄辺(よるべ)、己を措(お)きて誰に寄辺ぞ。よく整へし己にこそ、誠に得難き寄辺をぞ獲(え)ん。

意訳

自分自身が自己の最も頼るべき人である。誰が生涯の頼りになり得るのか。真理に目覚める努力を重ね、自分を頼りにしなければならない。親、先生、夫、妻、子、親族、財産、地位、名誉などは永遠の支えとはなり得ない。しっかりした自分を作り上げることが大切である。

出典

『法句経』

解説

『法句経』は『ダンマパダ=真理のことば』ともいい、お釈迦さま自身の言葉を伝える原始仏典の一つ。423の詩が26章にわけて収録されている。

妙機禅師

自らの内に真の支えを求める道を歩むことこそが、人生の本質に気づく第一歩である。多くの人は、他者からの援助や承認に依存しがちである。しかし、他人にのみ頼る生き方は、しばしば変わりやすい状況に翻弄される。たとえ親や友人、愛する者たちがそばにいるとしても、最終的には自分自身が頼りにすべき存在なのだ。

そのためには、まず自らをよく知り、心の内を整えることが求められる。自己認識を深めることによって、他者の期待や審判に左右されない強さを育むことができる。この内面的な充実こそが、真の安心感をもたらし、動揺することのない基盤を築くのだ。

外界の評価や物質的な支えは、一時的なものに過ぎない。名声や富は無常であり、思いも寄らぬ瞬間に消え去る可能性がある。だからこそ、堅実な自己の形成は不可欠である。心を整え、善悪の判断を磨き、誠実さをもって己の行動を導くことが、最も価値のある支えとなる。

仏教の教えは、自己の力を信じ、内面的な成長を求めることを促す。真理を追求し、内なる声に耳を傾けながら、日々の精進を怠らない姿勢が、最終的には普遍的な真理に至る道を拓くであろう。この道を進む中で、自らの内なる光を見出し、他者と結びつく真の力を感じるようになるのだ。

したがって、自己を磨く努力を重ね、他者に依存することなく、真の安定を見つけることが、今を生きる私たちにとっての至上命題である。これこそが、どんな時代にあっても変わらぬ知恵であり、心の平安を求める全ての人々に捧げるメッセージである。

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