ここを離れない。ここを見限らない。ここに踏み止まる
横田南嶺(円覚寺管長)
ここを離れない。ここを見限らない。ここに踏み止まる
「ここを離れない。ここを見限らない。ここに踏み止まる」
この世に生きる私たちは、日々さまざまな困難や誘惑に直面します。それは時に、これ以上前に進むことができない壁のように感じられることでしょう。そんな時、仏教の教えが私たちの道標となります。
まず、「ここを離れない」という言葉には、現実逃避をせずに、いま直面している問題や課題に立ち向かう勇気を持つことが含まれています。困難にぶつかると、人はつい別の場所や状況を求めたくなるものです。しかし、真の解決はその場から逃げることではなく、その場で問題を直視し、自分自身と向き合うことにあります。
次に、「ここを見限らない」という言葉は、現実を諦めずに受け入れる心のあり方を示しています。営みにおいては、うまくいかないことがあるのは自然なことです。しかし、それを理由に努力を放棄したり、自らを否定したりしてはいけません。見限らないということは、たとえ困難な状況や失敗があっても、その状況を乗り越えるための知恵と力を見出すことであり、その中にある成長の機会を捉えることです。
最後に、「ここに踏み止まる」という言葉は、心の強さと安定感を保つことの重要性を教えています。踏み止まるという行為は、固い決意と不動の信念を持って現実に対峙することを意味します。人生は常に変化し、予期しない出来事や挑戦が訪れますが、その中で自らの信仰や価値観を失わずに踏み止まる姿勢が求められます。
結局、この三つの言葉が意味するところは、私たちがどんな状況に置かれても、逃げずに、諦めずに、しっかりと自分の足で立ち、前に進み続けることの重要性に尽きるのです。それこそが、仏教の教えに根ざした生き方であり、悟りへの道に繋がるものと言えるでしょう。