鳥と虫鳴けども涙落ちず。日蓮は泣かねど涙ひまなし

日蓮上人(日蓮宗宗祖。1222-1282)

原文

鳥と虫鳴けども涙落ちず。日蓮は泣かねど涙ひまなし。

意訳

鳥や虫は鳴いても涙を流さない。日蓮は泣かないけれども、無情の世に苦しむ人達のことを思うと涙が止まらない。

出典

『諸法実相鈔』

解説

1273年、流罪地の佐渡一谷で、『法華経』の哲理と宗教者としての自覚について、行(実践)と学(学問)の二道に励むべきことを述べている。

妙機禅師

鳥のさえずりや虫の声が響くこの世界には、多くのものが無情の現実を受け入れ、ただ静かに生きています。この自然の音は一見、穏やかさをもたらすように思えますが、私たちの心の奥にある苦しみや悲しみを癒す力があるわけではありません。日蓮という高僧は、流罪という過酷な境遇にありながら、その声を聞き続けていました。

彼の心の中には、世の中の人々が抱える苦しみが深く刻まれていました。彼自身は涙を流すことはありませんでしたが、その思いは尽きることなく、彼の中でうごめいていました。人々の苦しみを思えば悲しみが溢れ、涙がこぼれそうになるのです。無情な世の中において、彼の心は常に弱き者に寄り添っていました。

日蓮は、法華経の教えを通じて、苦しむ人々に希望を与えようと尽力しました。彼の信念は、ただ知識や理屈を超え、実践こそが真実であることを示しています。彼は、困難に直面する人々がどのように生きるべきか、その道を示そうとしました。この行いは、他者を思いやる心、そして深い慈悲心から生まれています。

人生において、私たちは多くの試練に遭遇します。その中で、日蓮のように、他者の痛みを理解し、自らの心を捧げることができるならば、真の幸せに近づくことができるでしょう。彼の教えは、今も私たちに生きる指針を与えてくれています。鳥や虫の声に耳を傾け、その中で感じる苦しみや悲しみを忘れず、共に生きる力強さを見出していきたいものです。

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