医王の目には途に触れてみな薬なり、解法の人は礦石を宝とみる

弘法大師空海(真言宗開祖。774-835)

原文

医王の目には途(みち)に触れてみな薬なり、解法(げほう)の人は礦石(こうせき)を宝とみる。

意訳

優れた医者の目には、目に触れるものみな薬となる。宝石を知る者は、石を見ても宝と見る。

出典

『般若心経秘鍵』

解説

『般若心経』の解説書の中で最も有名な書で、特に真言密教の立場で注釈された名著。

妙機禅師

優れた医者と賢明な解法者は、周囲のものに対する見方が根本的に異なる。彼らの目には、何気ない日常の中にこそ真の価値や意味が存在することが見て取れる。医者は、ただの草花や地面に生える植物さえも、病を癒やすための貴重な薬草として認識できる。そのため、彼の視点は常に揺るぎないものであり、彼は常に必要なものを見出すことができるのだ。

同様に、解法を持つ者は、普通の石ころを見ていたとしても、それが真珠や宝石に変わる可能性を直感的に理解する。彼は眼前の平凡なものから、想像もつかないような素晴らしさを引き出すことができるのだ。このように、彼らは目の前にあるものをただ受け入れるのではなく、それに潜む可能性や内面を見抜く力を持っている。

私たちもまた、日常生活の中で何気なく過ごしている瞬間に目を向けるべきである。たとえ一般的には価値が見いだせないものでも、その中に潜む真実や意味を見つけ出すことができれば、そこには豊かな学びと発見が待っているかもしれないのだ。周囲の世界を新しい視点で捉えることで、私たちの心の中にも多くの宝が埋まっていることに気づくことができる。

このように、私たちの認識が広がっていく過程によって、目の前の世界がどれほど豊かで美しいものであるかを理解することができる。探求者としての姿勢を持ち続けることで、日々の生活をより深く味わうことが可能となる。教えを受け取る身でありながらも、同時にその教えを自らの中で発見し、生かしていく者として生きていきたいものである。

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